リゾートの外にある、もうひとつのフィジー リゾートの外に広がる日常
フィジーを訪れる多くの旅行者は、滞在中ほとんどをリゾート内で過ごします。
朝はビュッフェ、昼はプールサイドでランチ、夜はホテルのディナー。楽で、安心で、予定通りの時間。
しかし、ナンディの町に一歩出れば、すぐそこに屋台があります。
そこにあるのは、観光向けではない、本当のフィジーのストリートフードです。
幹線道路沿い、市場の端、夜の駐車場の片隅。折りたたみテーブルが広げられ、バーナーに火が入り、クーラーボックスが歩道に置かれます。午後6時を過ぎる頃には、バスターミナル裏で炭が赤く光り始め、焼き魚やカレーの煙が渋滞の車列の間をゆっくり漂っていきます。
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フィジーの屋台はどこにあるのか
中心となるのは、ナンディ市営マーケット。
コンクリートの床に開放的な造り、ずらりと並ぶテーブル。その一角に、調理済み食品の売り場があります。
女性たちがステンレストレイの後ろに座り、ロティ、揚げ魚、野菜カレーが並びます。ご飯はバナナの葉や発泡容器に盛られ、布巾で温かさを保っています。
真昼の暑さは客足を鈍らせ、屋台によっては品数を減らすことも。土曜の朝は混雑し、日曜は静かです。
空港近くのナマカ周辺にも屋台エリアがあります。地元の労働者や家族連れが中心で、観光客はほとんど来ません。歓迎されていないわけではなく、単にホテルから遠いだけです。
夜になると、ナンディの信号付近やスーパー前にも小さな屋台が現れます。たいていは一品勝負。
グリル担当、カレー鍋担当、クーラーボックスからココダを売る人。それぞれが役割を持っています。
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屋台ではどんな料理が作られているのか
フィジーストリートフードは、バンコクやメキシコシティのような「夜食文化」とは少し違います。
ここで売られているのは、朝・昼・晩のしっかりした食事。手早く作られ、手早く食べられます。
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屋台で味わえる魚とシーフード
魚は切れ目を入れ、塩を振り、片面ずつ焼くだけ。
マリネもソースもなく、添えられるのはレモンやライムのくし切り。チリペーストが付くこともあります。
ココダは専門の屋台で見つかります。冷たいまま提供され、ココナッツクリームは多くの場合その場で搾ったもの。缶詰とは食感も味もまったく違います。
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フィジーのロティとカレー
ロティは柔らかく厚みがあり、少し油分のあるタイプ。パラタというより、薄力粉のトルティーヤに近い印象です。
タワと呼ばれる鉄板で焼かれ、ときには直火で膨らませます。
カレーは屋台ごとに個性があります。
定番はチキン。ほろほろになるまで煮込まれます。年配のインド系フィジー人の店ではヤギ肉やラムも。ベジタリアン向けにはポテトカレー。さらっとした辛めのグレービーをロティで拭って食べます。スプーンは使いません。
サモサはどこにでもあり、小ぶりでぎゅっと詰まっています。濃い色の油で揚げられ、野菜の具にはクミンシードと青唐辛子。肉入りはやや少なめです。
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フィジーのフルーツと飲み物
若いココナッツはその場でナタで切り落とし、ストローを差して渡されます。
飲み終わると割ってもらい、柔らかい果肉をすくって食べます。
サトウキビジュースは機械式ローラーで搾ります。置いている屋台は限られますが、緑がかった泡立つ液体はとても甘く、氷と一緒にビニール袋に入れられます。
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フィジーの揚げ物
ババカウはフィジー風揚げパンの定番。ロティの代わりにカレーと一緒に出されることもあります。
キャッサバチップスは厚切りで、カリッと揚げられ、塩やチリパウダーが振られます。湿気やすいため、少量ずつ揚げるのがいちばんおいしい方法です。
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注文のしかた
注文方法はシンプル。
挨拶され、指差しで注文すれば十分。屋台の人たちは非言語での注文に慣れています。
価格は手書きの紙か、常連に知られた相場。
ロティ巻き FJ$4〜7、ココダ FJ$8〜12、焼き魚 FJ$10〜15 程度。
支払いは現金のみで、小額紙幣が好まれます。FJ$50札は崩せない店も多いです。
料理はすぐに渡されます。座席は少なく、市場内の共有テーブルがわずかにある程度。食べ終われば席を立ち、長居はしません。
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屋台の衛生面と安全性について
初めての人は衛生面が気になるもの。
最も簡単な目安は「地元客が並んでいる店」。回転が良く、食材が滞りません。
調理の様子を見るのも有効です。お金と食べ物を同じ手で扱う人は少なく、長年続く屋台はやり方が安定しています。
焼き魚、揚げサモサ、熱いカレーは比較的安心。ココダは酸で締めていますが、生魚である点は変わりません。
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屋台を利用しているのはどんな人たちか
客層は幅広いです。
放課後に揚げ物を買う家族、顔なじみの屋台でお茶を飲む年配のインド系フィジー人男性。
観光客もいますが多くはありません。入口近くの数軒には英語の看板がありますが、それ以外はいつも通り。観光客向け特別メニューも上乗せ価格もありません。
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フィジー料理の味の特徴とは
フィジーのローカルフードは、「何を足すか」ではなく「何を足さないか」で特徴づけられます。
クリームソースも凝った盛り付けもありません。
焼き魚は丸ごと一尾がアルミホイルの上にのるだけ。ロティは紙に包まれ、カレーは仕切りのない容器に入っています。
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屋台が愛され続ける理由
常連が戻ってくる理由は、安さでも便利さでもありません。
祖母が作っていたのと同じロティだから。
魚屋が名前を覚えているから。
十年同じテーブルで昼食を食べ続け、その習慣そのものが日常になったから。
観光客にとって一度の食事でそこまでの結びつきは生まれません。
しかし、それはナンディの日常の食卓を垣間見る体験です。リゾート版でも観光用でもない、ただ人々が毎日作り合う食事。
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ある日の一食
デナラウのリゾートから歩いて市場へ向かう人がいます。
入口近くの屋台でロティ巻きを買い、魚売り場のそばで立ったまま食べます。
人生を変えるような食事ではありません。
ロティは少し油っぽく、カレーは思ったより辛いかもしれません。プラスチックのテーブルは少しぐらつきます。
でも、そのロティを焼いた女性は12歳の頃からここで作り続けています。
昨日獲れた魚を20年来の知り合いから仕入れ、チリはナウソリ高地の農場から届いたもの。
それは混み合った市場の中で起きる、ごく普通の夕食です。
トラックのエンジン音、値段を叫ぶ声。それは演出ではなく、観光用に作られた文化でもありません。ただの夕食です。
その時間、その人は観光客という肩書きを離れ、ナンディでただ食事をしている一人の人になります。
